生活のなかの北極星(こぐま座α星)
日々の生活のなかでの星を見る目的を次のように分けることができる。
(1)時間を知る。
(2)季節を知る。
(3)方角を知る。
(4)位置を知る。
(5)信仰等
北極星の場合は、時間、季節を知る目標とすることができない。次のように船を進める方角や漁場の位置を知るために目標にした。
(1)船をすすめる方角
@帰るときに灯台とともに目標にしたケース
・鹿児島県肝属郡南大隅町大泊…キタボシめあて。種子島からの帰り、だいたいキタボシのほうに走ればよい。北より西のほうに向けたり。潮のかげんで、キタボシより西のほうに向けたり。佐多岬灯台めあて。灯台とキタボシと2つで確実。
A横当島へ渡るときに目標にしたケース
・鹿児島県大島郡大和村今里…星を見て行きよった。子、丑、寅、ホウバリ(方針)目標に、横当に行った。すわってばっかりやるのをきつくなれば、あの星、目標に。ネノホウブシ、いごかん。
・鹿児島県大島郡宇検村平田…ニブシ、ニブシ言うてた。ニブシ、ネブシ。子、丑、寅の子(ネ)、子星(ネブシ)。横当島まで櫓で行った。この星に向かえば、北に走るいうわけでしょ。これを背中にすれば南に走るいうわけよ。横当島行って帰りには、これを背中にして帰ってきた。
B山や島影で方角を判断することができないとき、目標にしたケース
・鹿児島県串木野市羽島…キタノヒトツボシ言って、大きいですね。夜になって方向わからんでも、その星を基準にしなあかん。島の影わからんとき、キタノヒトツボシみた。
(2)漁場の位置
・鹿児島県阿久根市倉津…キタノイッチョボシいごかんの。キタノイッチョボシ、今、あの長島の灯台の上に来たから「みのでのそね」。「みのでのそね」は、イセエビ、サバの漁場(ぎょば)だった。「みのでのそね」がキタノイッチョボシでわかる。昭和15、6年の話。
北極星は、2等星である。しかし、次のような特徴があるため、日々の生活のなかで他の1等星よりも目標にされ、多様で豊かな星名が形成された。
@いかなる季節においても、常に一晩中、見ることが可能である。
A方角を変えることがない。一晩中、ほぼ同じ位置に輝く。