第2章 海の暮らしと星
イカ釣りと星
イカ釣りの際、星による時間認識が行なわれ、目標とした星についての民俗的知識が形成された。また、役星の信頼性及び星の出にイカが釣れる理由について、様々な見方が伝えられた。
本章では、星の出によって時間認識を行なうという営みが、人と自然との共生関係を維持することとなったことを考えていきたい。
T はじめに−今も伝承される星による時間認識
星に、直接人の力を及ぼすことはできない。星は、どんなにがんばっても手の届くところには存在しない。しかし、山や海、川等と同様、星は、人にとって日常的な景観であり、生活及び生業に密着した自然環境のひとつであった[北尾 1999:125]。特に、星という自然環境は、時間認識を行なうために欠かすことのできないものだった。決して昔のことでも遙か遠くの国のことでもない。二一世紀を目の前にした日本で星により生業に必要な時間を判断した人がいて、数々の民俗的知識が形成されたのである。
例えば、青森県北津軽郡小泊村浜野のAさん(大正13年生まれ)は、「マスの出でイカ釣れたとか、明けの明星の出に朝イカが釣れたとか、そういうことはあった」と語った(1) 。オリオン座三つ星と小三つ星とη星でつくる形に桝を描き、イカの釣れる時間を判断したのである。
マスを構成する星は恒星であり、明けの明星は金星のことで惑星である。従って、星による時間認識は、次のような特性を経験により理解した上で行なわれたのであった。
@恒星が地球の自転によって一日に約一回転しているように見えることにより正確な時間を知ることができる。しかし、恒星は、正確には24時間ではなく約23時間56分で一回転するため、毎日、約4分ずつ早くもとの位置に戻る。従って、太陽のように、東の空にのぼったときが朝、南中すれば正午頃というように決まっているのではなく季節により異なることを理解した上で、例えば何時頃にマスが現れてイカが釣れるかを判断しなければならないこと。
A惑星である金星は、明けの明星のときは朝イカの目標になるものの宵の明星の時は当然のことながら目標とすることはできないこと。
本章では、このように今も伝承される星による時間認識について主にイカ釣りを事例に論じていきたい。
U イカ釣りの時間認識についての調査史
星によるイカ釣りの時間認識については五〇年以上も前から指摘されている。倉田一郎氏は、『佐渡海府方言集』で、「スワリサン 昴星。内海府では、これが山の端にかかる頃が、烏賊のナヅキ(2)」 と指摘している[倉田氏、1944、12]。また、内田武志氏は、『日本星座方言資料』で、「夜釣りの場合、昴星の東天に出現するのを目安に、烏賊、鯖などを獲るといふ処が、静岡県の海村以外にも、数多くあった。それは六月頃ならば暁け方であり、夏季では夜半、冬季になると日暮れ方に当ってゐる」というように、烏賊以外を含めて指摘している[内田氏、1949、19]。一方、石橋正氏は、1948年より日本全国の漁港を対象に調査した結果を野尻抱影に報告した。『日本星名辞典』には、イカ釣りにおける時間認識についての石橋氏の調査の概要が次のように掲載されている[野尻氏、1973、113〜114]。
・どの役星(3) の時が一ばん釣れるかというのは地方によって異なっている。
・「ハホ(すばる)が出たから釣れるぞ」と掛声をかける(岩手県種市)。
・「アトボシが出る時きっと釣れる」という(八戸市外白浜)。
・「タゲノフシ(オリオン)が出るまで、釣れなくても頑張るが、それが上っても釣れないようだったら諦めて帰る」という(八戸市鮫)。
・「イカの釣れる漁模様は、アオボシ(シリウス)の時が一ばん多く、サンコウ(三つ星)の出がこれに次ぎ、アトボシ、オクサの順に少ない」と逆位になっている(岩手県久慈)。
さらには、三上晃朗氏は、1975〜1976年に北海道積丹半島の調査を行なった[三上氏、1979、3]。
また、筆者は、1978年よりイカ釣りと星との関連を調査し、冒頭の青森県北津軽郡小泊村の事例のように、イカの釣れる時間認識を星の出によって行なっている事例を佐渡、能登半島、津軽半島、下北半島、亀田半島等において記録した[北尾、1980、179]。
V イカ釣りの時間認識に用いた星
イカ釣りの時間認識には、順番にのぼってくる次の星が主に目標となった(4) 。
@プレアデス星団
Aおうし座アルデバラン(またはヒアデス星団のV字形)
Bオリオン座三つ星(または小三つ星とη星を含む)
Cおおいぬ座シリウス
それぞれの星について、次のように認識し民俗的知識を形成していった。
1 プレアデス星団
最初に現れる星で、ほとんどの場合、イカ釣りの時間認識はこの星の出からはじまる(5) 。形成された民俗的知識を大きく分けると次のようになる。
(1)スバルの系統
スバリ、シバリ、ヒバリ、スマル、スマリ等がこの系統に属する[北尾 1991、49]。
【事例一】鳥取県東伯郡泊村泊(話者 Bさん、明治34年生まれ)のケース(6)
かたまった星を観察し、スマルと呼んだケースである。
「スマルいうのは、かたまった星さんだ。その星が出ると、一時間ごとにずっと出るでな」
【事例二】兵庫県美方郡浜坂町居組(話者 Cさん、明治41年生まれ)のケース(7)
秋にスマリの出でイカが釣れることに「おかしなもんです」と疑問を感じながらも目標にしたケースである。
「イカがようつきましてな、スマリ出が。おかしなもんですわ」
【事例三】石川県珠洲郡内浦町字小木(話者 Dさん、明治36年生まれ)のケース(8)
七つ程で小さくまとまっていると観察してシバリと呼び、十月初めの日没後の出を時間認識に用いたケースである。
「シバリ…、七つ程で小さくまとまっている。10月初め頃あがる。そのときイカつく」
【事例四】石川県羽咋郡富来町福浦港(話者 Eさん、明治36年生まれ)のケース(9)
小さい星が七つ程かたまっていると観察してスバリと呼び、イカが釣れたときにスバリの出のときのイカだと確認しあったケースである。
「スバリは小さい星が七つ程かたまっている。星の出のときイカくう。『今、スバリだ!』と言った」
(2)ムツラの系統
ウヅラ、ムジラ、ムジナ等がこの系統に属する[北尾 1994:37]。野尻抱影氏が、「<むつらぼし>は文字通り、肉眼にも六つの小星が連なっている」[野尻氏、1973、115]と述べているように、ムツラボシ(六連星)は六つの星が連なっているという意味である(10)。
【事例一】北海道亀田郡戸井町浜町(話者 Fさん)のケース(11)
ムツラからウヅラへと変化する過程で、ムツラの本来の意味が失われ、数も6個ではなく7個に、そして、連なっているのではなく鳥がかたまっているように認識し、新たな民俗的知識が形成された事例である。
「七つばかしの星がごちゃごちゃとかたまってる。鶉という鳥がかたまって飛んでいるように見えるから、ウヅラボシと言った」
同様に北海道爾志郡熊石町根崎においても鶉がかたまっていると認識したケースを記録した(12)。
【事例二】北海道松前郡福島町福島(話者 Gさん、明治42年生まれ)のケース(13)
南米大陸の形と観察してムヅラボシと呼び、アオボシがのぼるまでイカ釣りの星による時間認識が行なわれたケースである。
「六つ並んでムヅラボシ。南米大陸の形。ムヅラボシからアオボシの間は絶対眠れない。いつイカがつくかわからない」
2 おうし座アルデバラン(またはヒアデス星団のV字形)
プレアデス星団の次におうし座アルデバランとともにヒアデス星団がのぼってくる。この様子を日常的な景観としてイカ釣りを行なうなかで形成された民俗的知識を大きく分けると次のようになる。
(1)アルデバランの系統
アルデバランのみで時間認識したケースである。
【事例一】北海道松前郡福島町福島(話者 Hさん、明治42年生まれ)のケース(14)
ムヅラボシのあとに出るという順番の認識にもとづいて、アトボシという名前が形成されたケースである。
「ムヅラボシ、つかねば、そのあと三〇分遅れてアトボシがあがる」
【事例二】北海道亀田郡椴法華村元村(話者 Iさん、大正7年生まれ)のケース(15)
色の認識にもとづいて、アカボシという名前が形成されたケースである。
「アカボシ、色はなんぼか赤味がついてるのだね」
(2)ヒアデス星団の系統
ヒアデス星団のV字形で時間認識したケースである。
【事例一】鳥取県東伯郡泊村泊(話者 Jさん、明治34年生まれ)のケース(16)
「サシダモ」というイカナゴやイワシをとる網の形に認識して、サシダモという名前が形成されたケースである。
「サシダモのような格好になってる。網がついてな」
スマルが出たあとしばらく釣れなくなるが、再び釣れるようになる時間認識を行なうために「サシダモ」を用いたのである。
【事例二】岩手県大船渡市赤崎町(話者 Kさん、昭和5年生まれ)のケース(17)
背負籠「モッコ」の形に認識して、モッコという名前が形成されたケースである。
「どうしてモッコというかと言うと、この辺にね、あのしょいものつくったわけ。そして、こうちょうどこう…、何してこうしよってこうしよって歩くものあったんだものねえ。その格好していたからモッコと言ったもんだものね」
3 オリオン座三つ星(または小三つ星とη星を含む)
アルデバラン(ヒアデス星団)に続いて現れる星である。民俗的知識がオリオン座三つ星のみで形成されたケースと、小三つ星さらにはη星をも含んで形成されたケースがある。
(1)三つ星のみでの系統
三つ星のみで時間認識したケースである。
【事例一】石川県珠洲市狼煙町(話者 Lさん、明治45年生まれ)のケース(18)
三つの明るい星が光っていることからサンコウという名前が形成されたケースである。
「サンコウボシが上がってきたらイカがつく。サンコウボシ、明るい星だからイカつく」
【事例二】北海道松前郡福島町福島(話者 Mさん、明治42年生まれ)のケース(19)
星の数をもとにミツボシという名前が形成されたケースである。
「一時間くらいあとに三つの星があがる。ミツボシ。またつく」
【事例三】兵庫県美方郡浜坂町居組(話者 Nさん、明治41年生まれ)のケース(20)
三つ星がひとつずつ追いつくように順にのぼっていく様子を観察してオイツキという名前が形成されたケースである。
「ひとつあがって、またこうひとつあがってくるからのー。またひとつあがって三つあがってくる。だからオイツキ。これは漁師が勝手につけた何ですわ。ひとつあがって、また追いつくようにひとつあがってきて、また追いつくようにひとつあがってくるとオイツキ。水平線からすーとあがってくる。このくらいは離れてあがってきましてな。三つこう並んで。10分くらいしたらまたあがってくる」
(2)三つ星と小三つ星を含めてのケース
三つ星と小三つ星で時間認識したケースである。
【事例】宮城県本吉郡唐桑町宇津本(話者 Oさん、大正5年生まれ)のケース(21)
一般的にはプレアデス星団の名前であるムヅラが、三つ星と小三つ星の名前になったケースである。
「ここらへんの呼び名はね、私ら覚えてるのは、まずサキボシっていう…。それから、ムヅラ。ムヅラね。あっ、もうひとつあった。ごじゃごじゃというの。モクサって言った。モクサ。モクサボシ、どのへんに出とったかな。モクサってごじゃごじゃと…」
サキボシ(ぎょしゃ座カペラ)、モクサボシ(プレアデス星団)とともにムヅラによってイカ釣りの時間認識を行なったのである。
(3)三つ星と小三つ星とη星でつくる形を含めての系統
三つ星と小三つ星とη星でつくる形で時間認識したケースである。
【事例】青森県北津軽郡小泊村下前(話者 Pさん、大正5年生まれ)のケース(22)
桝の形に認識して、マスボシという名前が形成されたケースである。
「カタマリボシ出た、ヒカリボシ出た、マスボシ出た、アオボシ出た、こういうふうに夜明けまでずっと星を丹念して…。昔の桝。こういう具合に手つないであったでしょ」
4 おおいぬ座シリウス
星の出る順番及び色にもとづいて民俗的知識が形成された。
【事例一】宮城県本吉郡唐桑町宇津本(話者 Qさん、大正5年生まれ)のケース(23)
オリオン座三つ星のあと、いちばん最後に出るという順番の認識にもとづいてアトボシという名前が形成されたケースである(24)。
「イカなどはね、イカなどは星勘定でね。星の時間帯でアトボシまで見ていこうかとかね。アトボシ出たからもう漁がないから帰ろうか―とか」
プレアデス星団の出から星によって時間認識を行ない、たとえ漁がなくてもアトボシの出までは待ったのである。
【事例二】青森県北津軽郡小泊村下前(話者 Rさん、大正5年生まれ)のケース(25)
色の認識にもとづいてアオボシという名前が形成されたケースである。
「アオボシ、光る青い星です。青くこう光るわけです」
【事例三】北海道亀田郡椴法華村元村(話者 Sさん、大正7年生まれ)のケース(26)
事例二と同様、色の認識にもとづいて、アオボシという名前が形成されたケースである。
「アオボシ、なんぼか光があって、青味がかってる」
【事例四】北海道松前郡松前町博多(話者 Tさん、明治33年生まれ)のケース(27)
事例二と同様、色の認識にもとづいて形成されたアオボシの出を、マスボシで釣れないとき楽しみにしていたケースである。
「マスボシの出でつかねば、アオボシの出が楽しみだなと言って、アオボシの出を待つ。すると、アオボシの出につく」
W 星による時間認識の状況
星による時間認識の状況について、事例をもとに論じていきたい。
1 確実性
毎日の経験を通して星によってイカ釣りの時間認識を行なうことの確実性を信じ、星の出まで待つという民俗的知識が形成された。
【事例一】鳥取県東伯郡泊村泊(話者 Jさん、明治34年生まれ)のケース(28)
星の出と出の間は釣れなくても、星の出には確実に釣れたケースである。
「星間ホシマのあいだつかなくても、星出で必ずつく。星があがるときには必ずつくだな。その時間に眠たくてもがんばって起きとるですが…」
【事例二】岩手県大船渡市赤崎町(話者 Kさん、昭和5年生まれ)のケース(29)
モッコボシの出で釣れたから翌日もそのときまで待つと確実に釣れると期待したケースである。
「あー、あー、モッコボシ出たってね、そう言ったんだな。あのとき、あのスルメがいっぱい釣れたんだな−ことは。で、何時頃だからあしたもそのあたりまで待ってみるかと言ったもんだが」
2 各々の役星の信頼性
(1)信頼性の高い特定の役星があったケース
どの役星のときに釣れるかについて、石橋氏は、地方によって異なると指摘している[野尻氏 1973,1113]。また、三上氏は、どの星でいちばんイカが釣れるかは地域によっても異なること、同じ地域でも漁師それぞれに違うこと、陽暮れどきと夜明け方には比較的よく釣れるというのが一般的に共通した見方であることを指摘している[三上氏、1979、4]。本稿では、そのなかでも特にどの星が釣れる役星として信頼される傾向があったか論じていきたい。
【事例一】北海道亀田郡戸井町泊町(話者 Uさん、大正2年生まれ)のケース(30)
信頼性の高い役星としてオリオン座三つ星とプレアデス星団の二つをあげたケースである。
「サンコウ、ウヅラボシ、主にこの二つでイカつく」
【事例二】北海道松前郡福島町福島(話者 Hさん、明治42年生まれ)のケース(31)
信頼性の高い役星としてオリオン座三つ星とおおいぬ座シリウスの二つをあげたケースである。
「いちばんイカつく星は、ミツボシとアオボシです」
その他、次のような事例がある。
・石川県鳳至郡能都町姫…アオボシ、よくつく(32)。
・石川県鳳至郡能都町宇出津…サンコウ、いちばんよくつく(33)。
・石川県珠洲市飯田町…アオボシの出とか、その水平線から上がる時刻 が勢いよろしいですね。二メートルほど上がるまで釣れやすい(34)。・岩手県久慈市…サンコウ、いちばんつく(35)。
・青森県東津軽郡三厩村龍飛…イカはスバリの方がつく(36)。
・北海道亀田郡戸井町釜谷町…サンコウがいちばんつく(37)。
・北海道亀田郡戸井町釜谷町…ムジナボシがよくつく(38)。
・北海道亀田郡尻岸内町…サンコウ、アオボシがいちばんよくついた(39)。
・北海道亀田郡恵山町日ノ浜…サンコウ、主にこれでつく。ウヅラもつくにはつくようだ(40)。
・北海道亀田郡椴法華村富浦…サンコウがよくつく(41)。
・北海道茅部郡南茅部町臼尻…アオボシ、いちばんつく(42)。
・北海道茅部郡南茅部町尾札部…サンコウ、いちばんよくつく(43)。
・北海道上磯郡上磯町茂辺地…ミツボシ、アオボシがいちばんつく。ア ケノミョージョーは朝イカとも言う。ミツボシ、アオボシほどはあま りつかない(44)。
・北海道上磯郡上磯町当別…サンコウの出、アオボシの出がよくとれた(45)。
・北海道松前郡松前町博多…マスボシ、いちばんよくつく(46)。
・北海道瀬棚郡瀬棚町須築…秋はマスボシの方がよくつく(47)。
・北海道積丹郡積丹町美国町…それからやっぱり二時間か二時間ちょっ とあまりあとに、アオボシという星があがるの。数ある星のなかでアオメシテひかるの。その星がいちばんつく。その星とアカボシがつくの。どっちの星もつくけど、アオボシちゅうのがいちばんつく。完全につくだ。そのかわりずっと時間がおそいのよ(48)。
・北海道古平郡古平町…スバルの出がいちばんよくつく(49)。
・北海道古宇郡神恵内村…スバレのときよくイカがつく(50)。
信頼性の高い役星として、オリオン座三つ星(または小三つ星とη星を含む)をあげあたのが8例、プレアデス星団をあげたのが4例、シリウスをあげたのが3例、三つ星とシリウスの両方をあげたのが4例、オリオン座三つ星とプレアデス星団の両方をあげたのが1例だった。
(2)信頼性の高い特定の役星がなかったケース
経験をもとにどの星が釣れるのか認識したのと同様、試行錯誤をくり返した結果、信頼性の高い特定の役星はないという結論に達したケースがあった。
【事例一】石川県珠洲郡内浦町字小木(話者 Vさん、明治36年生まれ)のケース(51)
信頼性の高い特定の役星はなかったが、たいていシリウスかオリオン座三つ星の出で時間認識したケースである。
「どの星のときに多くつくかはそのときによる。たいていアオボシやサンコウの出につく」
【事例二】青森県北津軽郡小泊村下前(話者 Pさん、大正5年生まれ)のケース(52)
どの星が信頼性の高い役星かは日によって異なったケースである。
「今日の漁は、マスボシの出でついたとか、ウヅラノカタマリボシの出だとか、サンカクの出だとか、それぞれの漁によってイカの釣れるときを丹念してたものです」
【事例三】北海道松前郡福島町福島(話者 Hさん、明治42年生まれ)のケース(53)
どの役星が信頼性が高いかは全くわからなかったケースである。
「ムヅラ、アトボシ、ミツボシでつかなくてもアオボシでつくことある。ムヅラボシでついてもアトボシでつかないこともある。アトボシでついてもミツボシでつかないこともある」
【事例四】北海道磯谷郡蘭越町港町(話者 Wさん、明治40年生まれ)のケース(54)
信頼性の高い特定の役星はなく、潮と合致した星の出に釣れたケースである。
「どの星の出のときにでもイカがつくとは限らない。潮と星の出が合致するときつく、とわしらは丹念してる。サンコウの出のときにきのうついたからと言って、今日つくとは限らねえ。潮と合わなければだめだ」
その他、次のような事例がある。
・岩手県下閉伊郡普代村堀内…オクサ、ムジラ、アトヒカリ、どの星が よくつくかは時によってちがう(55)。
・北海道寿都郡寿都町…イカ釣りはいろいろ経験したが、どの星がよく つくということは経験したことはない(56)。
3 星の出と出の間の状況
星の出による時間認識を行なったあと次の星の出まで操業するケースと休むケースがある。
【事例一】京都府竹野郡丹後町間人(話者 Zさん、大正11年生まれ)のケース(57)
イカの場合は星と星の出の間も釣れたので操業したケースである。
「イカは、星が出なくても釣れましたから起きて操業してましたですけど」
【事例二】岩手県大船渡市赤崎町(話者 Kさん、昭和5年生まれ)のケース(58)
星の出と出の間もずっと釣れるかは日によって異なるので、操業したケースである。
「群れがある。いっぱい来るときの群れと、それから、群れの小さいときの群れとね。それによってもちがうんだものね。モッコボシのあと、そのほか全然釣れねえか言えば、それもぽろりぽろり釣れるもんだったものね。やっぱりその日の漁によって…。だから、星に関係なくずっと漁のあるとき釣れるときもあったべね」
【事例三】北海道亀田郡椴法華村元村(話者 AAさん、大正7年生まれ)のケース(59)
星の出と出の間に少しは釣れることもあるが、船頭の丹念によっては休むこともあったケースである。
「いやいやなんぼかつくときもある。つくときもあるし、つかねえときもある。やっぱり責任者の丹念だねえ。星と星の間につかなくなれば少し休んだらよかべ−と。ひとりかふたり番兵させてね」
X 星の出にイカが釣れる理由
星の出にイカが釣れる理由については、様々な見方が伝えられている。
【事例一】石川県輪島市輪島崎町(話者 ABさん、明治41年生まれ)のケース(60)
星の出と潮が関係していたケースである。
「イカは星の出、必ずつく。潮がとまるとか言う」
【事例二】北海道亀田郡椴法華村元村(話者 Sさん、大正7年生まれ)のケース(61)
事例一と同様、星の出と潮が関係していたケースである。
「海面からあがればイカつくとか…。そういう丹念でやったもんだ。星の出たとき潮まわりいうか、潮が速く流れたり、潮がだるんだりするんだ」
【事例三】北海道松前郡福島町福島(話者 Hさん、明治42年生まれ)のケース(62)
事例一及び二と同様、星の出と潮が関係していたケースである。
「星が出たとき潮がだるむわけだ」
その他、次のような事例がある。
・石川県鳳至郡能都町姫…星の出は海の色が変わる(63)。
・石川県鳳至郡能都町宇出津…星の出になると、魚は何か感じるのでは ないか(64)。
・岩手県久慈市…星の出で、海の水の温度が変わる(65)。
・青森県北津軽郡小泊村小泊…星の出は潮が変わるので丹念している(66)。
・青森県東津軽郡今別町今別…星の出・暮れ、月の出・暮れは潮が変わる(67)。
・青森県下北郡大畑町大畑…今から考えれば星の出など関係ない。ただ、イカのつく間隔が星の出る間隔に似てたからだけのようだ(68)。
・北海道亀田郡恵山町古武井…星が出ると水の温度が変わる(69)。
・北海道亀田郡椴法華村元村…海水があったかくなる(70)。
・北海道茅部郡南茅部町臼尻…水温が変わるんだ(71)。
・北海道上磯郡上磯町茂辺地…光の関係である。しかし、星の出の際の 光の関係でのみイカが寄ってくるとすれば、今のような明るいランプ を使用していても星の出でイカが寄るのを説明できない。故に、光以 外にも関係がある(72)。
・北海道松前郡福島町吉岡…どういうもんだろな。理由なんてないだべ さな。イカが星の光にめざすのではない(73)。
・北海道爾志郡熊石町泊川…星の出、水の温度が変わる(74)。
・北海道爾志郡熊石町根崎…星の出、潮の加減(75)。
潮に関係するものが六例、水温に関係するものが五例で多かった。また、海の色、間隔が似てる、何か感じる、光の関係、理由なしが各一例ずつあった。
Y 星の民俗的知識の習得
星に関する知識は、学校で学んだわけではなかった。
【事例】青森県北津軽郡小泊村下前(話者 Rさん、大正5年生まれ)のケース(76)
年輩の人の話を自然に聞いて尋常小学校卒業の頃には習得したケースである。
「その時分にすぐわかるよ。形がちがうんだもの。とにかく、習ういうわけじゃねえぜ。自然に年寄りたちみんなしゃべること自然に聞いて、ああそうかなあ−と。すぐ覚えます。一回見ればわかりますよ。アオボシは色がちがうし、マスは桝の形してる」
学校における星の知識は、ともすると実際の観察や経験なしに受動的に習得されがちである。それに対し、星の民俗的知識は、星の色、動き等の観察にもとづいて形成されたものである。そして、ひとりひとりが星によって判断し、行動し、星という自然環境を前に豊かな表現力を育んでいったのである。
Z イカ釣り以外の事例
星による時間認識はイカ釣り以外にも行なわれていた。
【事例一】京都府竹野郡丹後町間人(話者 Zさん、大正11年生まれ)のケース(77)
イカの場合は星と星の出の間も釣れたが、鯖の場合は釣れないので寝たケースである。
「夜、鯖を釣ったヨサバ釣りというのがありました。ヨサバのときには、星の出まで寝たんです。釣れないですわ、途中には全然。その星の出る時間まで寝ちゃうんですね。横になってカラダ休めて、そのカナツキの出とかスマルの出になると起きて操業するんです」
【事例二】福井県坂井郡三国町安島(話者 ABさん、明治43年生まれ)のケース(78)
最初に目標にするのは、星の出でなく星の入りであり、鱸や鯛の目標にしたケースである。
「ヨイノミョージョーいうのは、晩方、この島にあがってるのじゃ。船で行く時分に、6時、7時に。それで、八時頃になれば、ヨイノミョージョーのはいるときに魚が釣れるんだ。鱸でも鯛でも何でも。その星のはいるときにばたばたと」
ABさんによると、ここの魚は潮時よりも星に関係したのだった。
宵の明星のはいったあと魚が釣れなくなる。そして、その次に魚が釣れる時間認識をホーキボシ(プレアデス星団)の出によって行なった。
「ホーキボシいうのがあがってくるのじゃ。そのときもよう釣れるのじゃ」
ホーキボシの次の時間認識はサカヤノマス(オリオン座三つ星と小三つ星とη星でつくる形)によって行なった。
「夜明けになってくると、サカヤノマスって、こういう 格好したのが三つ、柄も三つついて。この星があがるときも、魚よう釣れるんじゃ」
釣れるのは、星の出から30分ほどで、その後は、次のように全く釣れなくなった。
「この星の出る間は釣れても、30分ほどしたらぴたってとまってしまう。釣れてもとまるわけ。たまにはきても道具にさわっていくだけで…。星のあがるちょっと前からさわぎだすんだ。あがってしまえば知らん顔する。あがるちょっと前からさわぎだす。魚が…」
【事例三】福井県三方郡美浜町日向(話者 ACさん、大正4年生まれ)のケース(79)
鰺や鯖釣りのときの時間認識を行なったケースである。
「星が山の向こう側に出てくるでしょ。出てくる前になるとね。魚がね、よく釣れる。よう釣れるな」
星の出の10分か15分前から魚が釣れだしたのである。
目標にした星の出は次の通りである。
・ノトボシ(ぎょしゃ座カペラ)
・カラツキ(オリオン)
・オノボシ(シリウス)
星の出と出の間は、次のように少ししか釣れなかった。
「星と星の出てくる間があるでしょ。その間はね、ぽつぽつしか釣れんのや」
【事例四】石川県珠洲郡内浦町字小木(話者 Vさん、明治36年生まれ)のケース(80)
タラボシ(アオボシ即ちシリウス)によって、イカ以外に鯖の時間認識を行なうとともに、鱈の船の出る時間認識に用いていたケースである。
「イカ以外にも鯖もついた。一月頃、鱈の船が出る時間にあがる星、仲間でタラボシと言っていたがアオボシのこと」
【事例五】石川県羽咋郡富来町福浦港(話者 ADさん、明治33年生まれ)のケース(81)
鱒や鱸等あらゆる魚の時間認識に用いたケースである。
「ヨアサノミョージンて言うてね。特に大きな星が東からあがる。そのときに、その星があがったときには、やっぱり魚の釣り具合がよい。そりゃ、鱒でも鱸でも」
[ 星による時間認識−時間軸上と空間軸上での検証
本稿においては、星空が時代(時間軸上の位置)及び地球上の位置(空間軸上の位置)によって異なることに注目して、星による時間認識について論じていきたい(82)。即ち、時間認識を単に伝承地の現在の星空に限定して論じるのではなく、過去の星空や他の地域の星空を検証することによって明らかにしていきたい。
1 時間軸上での検証−過去の星空
人が、イカ釣りと星との関係に気がついたのはいつ頃だろうか。
池田哲夫氏は、佐渡のイカ釣りについて、『明治前日本漁業技術史』にある佐渡の口碑の1458年にはいささか疑問としながらも歴史の古さを指摘している[池田氏、1985,452]。1500年頃からだろうか。
また、イカ釣り技術の確立の前からずっと自然環境としての星とのかかわりが育まれていたとすると、さらに検証の対象を広げなければならない。
能登半島における紀元前500年から1900年までの星の出と出の間隔を検証した結果、次の三点が明らかになった。
・プレアデス星団の出とアルデバランの出の間隔は、70分前後の状態が続いている。
・アルデバランの出とオリオン座三つ星の出の間隔は2時間強の状態が続いている。
・オリオン座三つ星の出とシリウスの出の間隔は1時間50分くらいの状態が続いている。
即ち、多様な民俗的知識の形成に充分な期間、星の出の間隔が継続したのである。しかしながら、アルデバランの出とオリオン座三つ星の出の間隔と、オリオン座三つ星の出とシリウスの出の間隔はほぼ同じであるが、プレアデス星団の出とアルデバランの出の間隔は短い状態で継続している。また、アルデバランを除いて考えると、プレアデス星団の出とオリオン座三つ星の出の間隔が約3時間10分、オリオン座三つ星の出とシリウスの出の間隔が約1時間50分となり等間隔とはなっていない。これがイカの体内時計との関連を論じるのを困難にしている第一の点である。
(拙著『星の語り部』(2002年発行)P56−P61に関連する表を掲載しました)
2 空間軸上の検証−他の地域の星空
1800年について、津軽半島、能登半島、沖縄、サタワル島付近での星の出と出の間隔を検証した結果、次の2点が明らかになった。
・イカ釣りの調査地域のなかで北に位置する津軽半島と南に位置する能登半島の間隔を比較すると、約4〜8分ずつ異なり、プレアデス星団からシリウスまでの間で合計20分近く津軽半島の方が長くなる。
・津軽半島が最も星の出と出の間の間隔が長く、サタワル島では半分近くの間隔になってしまう。この現象は、プレアデス星団の出とアルデバランの出の間隔、アルデバランの出とオリオン座三つ星の出の間隔、オリオン座三つ星の出とシリウスの出の間隔全てに共通する。
即ち、津軽半島と能登半島の20分近くの差にもかかわらず、同じように星の出でイカが釣れるということは、体内時計と星の出との関連を論じるのを困難にしている第二の点である。緯度が北に位置するところのイカほど体内時計が短いとは考えにくいからである。
\ おわりに−共生関係の形成と崩壊
星の出にイカあるいは他の魚が釣れるのはなぜだろうか。なぜ、イカあるいは他の魚を釣る時間認識が星によって行なわれたのだろうか。
秋道智彌氏は、「時間認識についての議論は、自然のリズムを人間の集団がいかに自らの社会における時間のシステムとして取り込んでいるのか、さらに広くとらえるならば、自然がいかに人間の文化や社会のなかに変換され、構造化されるのか、といった自然の文化化にかかわる基本的な問題として追求する必要があるだろう」と述べている[秋道氏、1994、46]。そして、オセアニアにおいて、星や星座による時間認識を「嵐の星」等を事例に明らかにし、水中の魚や動物が水平線上に出現してから星や星座に変換すると考えられている場合が多くあると指摘している[秋道氏 1994,55]。
オセアニアの事例は、星の出にイカが釣れるという日本での伝承と通ずる。日本においてもこのようなイカから星への変換が行なわれているのだろうか。
本稿によって、体内時計と星の出との関連を考えるのが困難なことが明らかになった。また、イカが釣れる理由として伝えられている星の出と潮、水温の相互関連性はない。そこで、次のようなひとつの可能性を提言したい。
・第一段階…イカはもちろん他の魚の場合でも釣り続けているとやがて釣れなくなる。そして、しばらく釣らないで休んで待っていると再び釣れるようになる。従って、どれだけ休んだら釣るかの行動の再開の 時間認識の方法として、「あの星の出たときに再び釣ろう」というように、星の出を採用するようになった。
・第二段階…星の出まで休むと再び釣れるようになってくるというように、人と星とイカ(あるいはその他の魚)との共生関係が形成されていく。そして、星の出によってイカ(あるいは他の魚)を釣るという時間認識を行なうという営みが人と自然との共生関係を維持することとなる。
そして、このような共生関係が崩壊した事例が次のケースではないだろうか。
【事例】福井県坂井郡三国町安島(話者 ABさん、明治43年生まれ)のケース(83)
イカ以外の魚のケースである。一年前(1986年)から鱸が釣れなくなったのである。
「去年から釣れんのや。今年いっぺんも釣れんのや。一匹も釣れん」
サカヤノマス(オリオン座三つ星と小三つ星とη星でつくる形)という星が出るときも釣れないか確認すると、「釣れない。どんな時間になてもあかんのや」という答がかえってきた。
人は、イカを釣り生活の糧とするとともに、時間認識を星により行ない、多様な星の名前、伝承を育んだ。星は、山や海、川等とともに日常的な景観となり、世界観を形成していった。その意味で心の糧となった。イカ、星、海の共生関係は、物質的な面だけにとどまるのではなかった。それが崩れるということは、単に物質的な共生関係の崩壊にとどまらない重大な危機である。
注
(1)筆者による調査。調査年月、1999年11月。
(2)烏賊が海づらへ浮遊してくる時刻[倉田氏 1944、48]。
(3)イカ釣りの目標にする星を役星と呼んだ。
(4)必ずしも登場するとは限らないという制約があるが5番目に明けの明星を目標にすることもあった。その他、ぎょしゃ座カペラを目標にしたケースもある。
(5)プレアデス星団ではなく、ぎょしゃ座カペラやオリオン座三つ星からはじまるケースもある。
(6)筆者による調査。調査年月、1984年11月。
(7)筆者による調査。調査年月、1993年4月。
(8)筆者による調査。調査年月、1980年4月。
(9)筆者による調査。調査年月、1983年3月。
(10)数については、「六つ」だけでなく、「四つ五つ」「五つ六つ」「七つ」「九つ」「七つや十かたまって」「わからないくらい。八個や十個ということはない」等様々なケースを記録した。実際は、六つか七つ、視力の優れている人で九個くらい見える。
(11)筆者による調査。調査年月、1979年10月。
(12)筆者による調査。調査年月、1980年5月。
(13)筆者による調査。調査年月、1980年11月。
(14)同前
(15)筆者による調査。調査年月、1999年11月。
(16)前掲(6)
(17)筆者による調査。調査年月、1993年8月。
(18)筆者による調査。調査年月、1982年10月。
(19)前掲(13)
(20)前掲(7)
(21)筆者による調査。調査年月、1993年8月。
(22)筆者による調査。調査年月、1999年11月。
(23)前掲(21)
(24)プレアデス星団のあとに出るアルデバランをアトボシと呼んだ ケースもある。同じ名前が異なる星を意味する例は、ムヅラをはじ めよくある。
(25)前掲(22)
(26)筆者による調査。調査年月、1999年11月。
(27)筆者による調査。調査年月、1980年6月。
(28)前掲(6)
(29)前掲(17)
(30)筆者による調査。調査年月、1979年10月。
(31)前掲(13)
(32)筆者による調査。調査年月、1980年4月。
(33)同前
(34)筆者による調査。調査年月、1982年10月。
(35)筆者による調査。調査年月、1980年5月。
(36)筆者による調査。調査年月、1979年10月。
(37)筆者による調査。調査年月、1979年10月。
(38)同前
(39)同前
(40)同前
(41)同前
(42)同前
(43)同前
(44)筆者による調査。調査年月、1980年6月。
(45)筆者による調査。調査年月、1980年11月。
(46)前掲(27)
(47)筆者による調査。調査年月、1980年6月。
(48)筆者による調査。調査年月、1979年4月。
(49)筆者による調査。調査年月、1979年4月。
(50)同前
(51)前掲(8)
(52)前掲(22)
(53)前掲(13)
(54)筆者による調査。調査年月、1979年4月。
(55)筆者による調査。調査年月、1980年5月。
(56)筆者による調査。調査年月、1979年4月。
(57)筆者による調査。調査年月、1984年11月。
(58)前掲(17)
(59)前掲(15)
(60)筆者による調査。調査年月、1983年3月。
(61)前掲(15)
(62)前掲(13)
(63)前掲(32)
(64)前掲(32)
(65)前掲(35)
(66)筆者による調査。調査年月、1980年5月。
(67)筆者による調査。調査年月、1981年12月。
(68)筆者による調査。調査年月、1979年10月。
(69)前掲(37)
(70)前掲(37)
(71)前掲(37)
(72)筆者による調査。調査年月、1980年6月。
(73)筆者による調査。調査年月、1980年11月。
(74)筆者による調査。調査年月、1980年5月。
(75)同前
(76)前掲(22)
(77)前掲(57)
(78)筆者による調査。調査年月、1987年8月。
(79)筆者による調査。調査年月、1987年10月。
(80)前掲(8)
(81)筆者による調査。調査年月、1983年3月。
(82)筆者は、時間軸上の位置によって星空が異なることをもとに、 北極星の動きの伝承の形成について論じた。[北尾 一九九八:24−25]。本章においては、この方法に加えて空間軸という視点からも論じる。
(83)前掲(78)
参考文献
秋道智彌 「漁労活動と時間認識」掛谷誠編『環境の社会化− 生存の自然認識』雄山閣、1994。
池田哲夫「佐渡のイカ釣り」森浩一『技術と民俗(上)=海 と山の生活技術誌=』小学館、1985。
北尾浩一「イカ釣り−星の民俗調査報告」『天界』六六二:179−181、1980。
北尾浩一『ふるさと星物語』神戸新聞総合出版センター、1991。
北尾浩一「ムツラについての調査報告」『ステラ』3:34−38。
北尾浩一「天文民俗学試論(9)」『天界』883:24−25、1998。
北尾浩一「星の環境民俗学試論」『日本民俗学』219:125−133、1999。
倉田一郎『佐渡海府方言集』中央公論社、1944。
三上晃朗 「積丹沿岸地方に於ける烏賊釣りの星について」 『てんぶんがく』35、3−7、1979。
野尻抱影『日本星名辞典』東京堂出版、1973。
内田武志『日本星座方言資料』日本常民文化研究所、1949。
(本稿は、2000年3月に作成したもので、その一部を再構成したものが『星と生きる 天文民俗学の試み』(2001年)『星の語り部 天文民俗学の課題』(2002年)に掲載されています。その後に行なわれた調査研究をもとに改定していきたいと思います)