酒桝星
湯村 宜和氏撮影
オリオン座三つ星と小三つ星とη星でつくる星の並びを見て、酒桝をイメージしました。 酒桝
福井県坂井郡三国町のおじいさん(明治43生まれ)は、「サカヤノマス」と呼んで、イカだけでなくタイやスズキを釣る目標にしていました。
「夜明けになってくると、サカヤノマスって、こういう格好したのが3つ、柄も3つついて。この星があがるときも、魚よう釣れるんじゃ」
「この星の出る間は釣れても、30分ほどしたらぴたって止まってしまう。釣れても止まるわけ。たまには来ても道具にさわって行くだけで……。星のあがるちょっと前から、さわぎだすんだ。あがってしまえば、知らん顔する。あがるちょっと前からさわぎだす。魚が……」
おじいさんの場合は、酒屋さんにある桝をイメージしたのです。単に桝というのもよいのですが、お酒を入れるのは感激させられます。それも、酒屋さんの桝をイメージするのはなかなかよいものです。
酒桝は、酒屋だけでなく、各家庭にありました。その酒桝を星空に描きました。愛媛県伊予郡双海町下灘のおじいさん(大正15年生まれ)の話です。
「昔やったら夜時計はないし、スマルが出た、サカマスが出たけ何時だ、いうのでやりよったらしい。わしらは、おやじにそういうふうに教えてもらった」
今日みんなが時計を持つように、ひとりひとりの酒桝星を心に持ったのです。そして、酒桝星をはじめ様々なことが親から子へと伝承されたのでした。
鹿児島県喜界島では、酒桝ではなく、アブラゴという日本の星座に出会いました。酒ではなく、油をはかるのに用いる桝をイメージして、アブラゴ(油合)と呼んだのです。暮らしのなかで、あるときは、お酒を、あるときは油を注いだのです。 このようにして、日本の星座は、多様で豊かなものとなりました。