しそうのほし(四三の星)
湯村 宜和氏撮影
兵庫県高砂市戎町のおじいさん(明治30年生まれ)の話です。
「シソウノホシいうのがある。ネノホシのぐるりをまわる。シソウノホシはななつの星。それがネノホシのぐるりをまわる」
「シソウ」とは、四(シ)と三(ソウ)のことです。北斗七星の桝をサイコロの四の目に、柄を三の目に見たのです。大空にサイコロをころがすと四と三の目が出ました。ころがったサイコロは、その勢いで、ネノホシ(北極星)のまわりをまわり続けます。
愛媛県西条市西之川(石鎚山)のおじいさん(明治38年生まれ)の話です。
「スマル、カセボシは入(い)るくがあるが、私はチソボシ入るくない」
高砂で聞いた「シソウ」が「チソ」に変化していました。石鎚山では、星空の下で炭を焼いたのです。星ぼしが時計の代わりでした。スマルとカセボシが西の空へ低くなっていくとチソボシ(北斗七星)が高くなっていきます。スマル(プレアデス星団)とカセボシ(オリオン座)は西の山々へと入っていくのですが、チソボシは入ることができません。その様子を歌ったのでした。おじいさんの話は続きます。
「いいかげん嫁にいかなあかんいうふうに言って。今頃とちがって、年いって嫁にいかずおりゃ、そういうふうなことを昔の人は言うたらしい」
昔は、結婚しないでいると、チソボシが沈まない(入るくない)のにたとえられたのです。
星空に描かれた「しそうのほし」(湯村宜和氏撮影)