すまる
湯村 宜和氏撮影 漁具「すまる」
「すまる」はプレアデス星団のことです。古代の玉飾り「美須麻流之珠(ミスマルノタマ)」に通じます。プレアデス星団の代表的な和名は「すばる」で、「星はすばる……」というように約千年前に枕草子で登場し、今ではハワイの「すばる望遠鏡」の名前にもなっていますが、「すばる」ではなく、「すまる」という和名が広範囲に分布しています。その他にも羽子板星等の様々な和名が伝えられています。
プレアデス星団は、冬の星と思われがちですが、6月の明け方に東の空に登場します。最初に捉えたのは6月9日という記録がありますが、実際は梅雨の季節ということもあり、夏至の頃というケースもあります。プレアデス星団は、タイゲタ・マイア・エレクトラを上にアトラスを下にして登場します。羽子板の羽にあたる板を上にしてのぼってくるのです。一方、沈むときは、エレクトラを少し右下に、アラトスを左上に、即ち羽を打つ板が少し右下になっています。徳島県鳴門市里浦のおじいさんが書いてくださったプレアデス星団の絵は、のぼるときのものでした。おじいさんの話から……。
「すまるさんいうて、ものかけるような小さな星がかたまってな。すまるって、海の底にものつないだりかけるやつ。海の底のタコツボひっかけるような形しとる星があるで。タコツボでも何でも落としたものでもさがす道具……」
おじいさんも、「すばる」でなく「すまる」と伝えていました。しかし、玉飾りではなく、タコツボをひっかける漁具「すまる」の形を想像しました。
「あれは朝やけんな。昔だったら時計ないんで星たよりじゃ」
漁具すまるのひっかけるところを上にのぼってくる様子が、夜明けの近いことを教えてくれたのでした。玉飾り、漁具スマル、羽子板……。高貴な生活のなかでの玉飾り、星空の下で魚を採る人の暮らしのなかでの漁具すまる、正月、歓声をあげて遊ぶ子どもたちの羽子板、それらをプレアデス星団の光がやさしくイメージしてくれます。
星空に描かれた漁具「すまる」(湯村 宜和氏撮影)